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障がい者が直面する雇用市場の障壁を低減するリクルートグループの取り組み

リクルートグループは「2030年度までに、世界の雇用市場で障壁に直面する求職者累計3,000万人の就業をサポートする」ことを目標に掲げており、その一環として障がいへのバイアス(偏見)による障壁の低減に取り組んでいます。障がいの特徴も仕事をする上で必要なサポートもさまざまで、型にはまった対応が難しいことから、障がい者雇用を躊躇している企業も未だ多く、障がい者の就業率は非常に低いのが現状です。しかし、障がい者の持つ能力も多岐にわたり、これを見過ごすことは企業にとっても社会にとっても大きな損失です。リクルートグループは、障がい者が雇用市場で公平な機会を得て活躍できるよう、各種取り組みを進めています。

世界的に低い、障がい者の就業率

WHOによると、世界の全人口の約15%にあたる10億人以上に、身体面、精神面および知能面を含む何らかの障害があるとされています(注1)。しかし、障がい者の就業率は世界的に低いのが現状です。米国では、成人人口の26%が障がいを持つとされますが(注2)、そのうち仕事に就いているのは2022年時点で21.3%にとどまっています(注3)。障がい者雇用が義務化されている日本でも、法定雇用率を満たしている企業は半数以下にとどまります(注4)。他のOECD諸国は概して米国や日本と似たような状況で、発展途上国ではさらに低い就業率になっています。

では、障がいのある求職者は、雇用市場で具体的にどのような障壁に直面しているのでしょうか。

まず、障がい者を積極採用する企業が少なく、就業機会が圧倒的に少ないことが挙げられます。どのような障がいに対してどのような配慮が必要か、どのような職務を担ってもらえばその力が活かせるのかなどが分からないがゆえに、雇用に踏み切れない企業が多くあります。また、職場のハード面の整備が進まず、物理的に障がい者を受け入れるのが難しい企業もあります。

さらに、この限られた就業機会を障がい者が自ら見つけるのが難しいことも、障壁となっています。視覚や読字に関する障がいを持つ方も含めた誰もがアクセスできるようになっているウェブサイトは2022年時点でもわずか3%しかないと言われており(注5)、自力で求人にアクセスして、自分に合った仕事・職場か判断するのに十分な情報を得ることがまず難しく、またワンストップで障がい者を積極採用している求人を見つけられるような求人検索サイト等もありませんでした。このため日本でも、福祉事業所経由や、ハローワークの窓口で専門の担当者から紹介される形で、求人を見つけるのが一般的となっています。

また、ひとたび就職できても、周囲の理解や配慮が十分得られずに、短期で退職してしまうケースも多く、定着率は全体平均を大きく下回っています。日本でも、一般企業に就職した障がい者が1年以上職場に定着する割合は60%未満と言われています(注6)

以下では、こういった障壁を低減するため、リクルートグループの各戦略事業ユニット(Strategic Business Unit:SBU)が行っている取り組みの一部をご紹介します。

(注1) WHO 2011年
(注2) Centers for Disease Control and Prevention(CDC)
(注3) Bureau of Labor Statistics
(注4) 厚生労働省「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」
(注5) WebAIM, a non-profit based at Utah State University
(注6) 2017年障害者職業総合センター

HRテクノロジーSBU:Indeedの取り組み

Indeedでは、プラットフォームやプロダクトの進化、さらにパートナーシップやインクルージョン・ビジネス・リソース・グループ(IBRG)(注7)を通じた取り組みを行っています。

1. プラットフォーム
英国のIndeedは、英国政府が推進するDisability Confidentプログラムに参加している企業にDisability Confidentバッジを付与しています。これにより求職者は、障がい者を積極雇用し、より多様でインクルーシブな職場づくりを積極的に進めている企業を、Indeed上の検索で簡単に見つけることができます。

Disability Confidentバッジの付いた求人のイメージ

Disability Confidentバッジ

2. プロダクト開発
Indeedでは、今後開発されるプロダクトが障がいのあるユーザーも含めた誰もが利用できるものにするため、2020年にIndeedアクセシビリティ・ポリシーを制定し、それに基づいて役割毎のトレーニングやスクリーンリーダー(画面情報の音声読み上げ機能)のテストを実施しています。また、開発に携わるパートナー企業が、ウェブアクセシビリティに関する国際的なガイドラインであるWCAG(Web Content Accessibility Guideline)に沿った形で開発を進められるよう、その内容を盛り込んだIndeed独自のアクセシビリティ・スタンダードも設けています。

3. パートナーシップ
英国では国民保健サービス(National Health Service:NHS)およびShaw Trustと、また米国ではGoodwill Industries Internationalなどの非営利団体とのパートナーシップを通じて、障がいのある求職者の就業支援、エコシステムの構築、プラットフォームの改善を進めています。

4. インクルージョン・ビジネス・リソース・グループ(IBRG)
障がいのある従業員のIndeed社内での活躍推進を目的として、従業員主導でインクルージョン・ビジネス・リソース・グループ(IBRG)が設けられ、従業員の帰属意識を育むための課題や解決策に関する幅広い議論が行われています。あらゆる障がいに対する知識や理解の向上を目的に活動する
Access Indeed外部サイトへ(英語動画のみ)はその一例です。

(注7) 一般に「従業員リソースグループ」と呼ばれる、特定の属性(性別、性的指向、国籍、人種、ライフスタイルなど)や経験を共有する従業員が社内で自主的に運営する組織。ボトムアップ型のダイバーシティ推進策で、米国では1970年代から広まり、現在ではフォーチュン500企業の90%以上で取り入れられている。

人材派遣SBU:リクルートスタッフィングの取り組み

リクルートスタッフィングは、アビリティスタッフィング外部サイトへのブランドのもとで、精神障がい者に特化した派遣サービスを提供しています。就労決定ではなく「働き続けること」をゴールとし、登録前の面談や専門スタッフのフォローなどにより、派遣スタッフ一人一人のニューロダイバーシティ(Neurodiversity、神経多様性)(注8)に合わせたケアを提供しています。また、クライアント企業の精神障がいへの理解を促すことで、高い定着率を実現しています。

また、リクルートスタッフィングクラフツでは、重度の知的障がい者の方々が得意とする業務領域を確保し、障がい者の雇用促進を図っています。2008年4月に古紙をリサイクルして卓上カレンダー等を製造する事業をスタートし、2021年4月からはデータ入力・加工、書類・記事作成を行う在宅型雇用にも拡大しています。

(注8) ニューロダイバーシティ(Neurodiversity、神経多様性)とは、Neuro(脳・神経)とDiversity(多様性)という2つの言葉が組み合わされて生まれた、「脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方

マッチング&ソリューションSBU:リクルートの取り組み

リクルートの総務、契約書の管理、経理業務などバックオフィス業務を担当するリクルートオフィスサポートでは、社員の8割以上が障がいを持っています。2016年6月からは在宅雇用も開始し、企業数が少なく障がいを持つ方が就労機会を得にくい地方でも、障がいを持つ方を在宅勤務社員として採用しています。

またリクルートでは、障がい者理解を広める「パラリング外部サイトへ」という活動も行っています。パラリングは「パラダイムシフト(考え方の変化)」と「リング(輪)」を組み合わせた造語で、小・中学校を対象に障がい者への理解を深める出張授業やパラスポーツの体験会を実施してきました。また近年は、より多くの方に学びを届けるため、スタディサプリと連携したオンライン学習コンテンツやパラスポーツ疑似体験VR(360°)動画といった形でも、障がいや共生社会について考えるきっかけを提供しています。

障がいの有無に関わらず誰もが公平な雇用機会を得られる社会へ

世界中に10億人いるといわれる障がい者が、仕事に就き、賃金を得て自立することは、障がい者自身の社会参加という側面だけでなく、社会全体にとっても重要です。特に今後、少子高齢化が進み労働人口が減少していく社会においては、経済活動を維持拡大していくうえで、非常に大きな力になるでしょう。障がいの有無に関わらず誰もが公平な雇用機会を得て活躍できる社会に向けて、そして企業が障がい者のスキルやケーパビリティを活かして事業成長を実現できる社会に向けて。リクルートグループは、プラットフォームの進化やパートナーシップ、また自社採用も通じて、より多くの公平な機会を創出することで、障がい者の雇用を推進し、この障壁の打破に挑んでいきます。

2023年11月08日

※事業内容や所属などは記事発行時のものです。