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「スキルファースト採用」の推進で学歴の障壁を取り除く ― Indeedの取組み

リクルートグループは、2030年度までに、世界の雇用市場で障壁に直面する求職者累計3,000万人の就業をサポートすることを目標に掲げています。なかでも力を入れているのが「学歴の壁」の低減。Indeedが中心となって、学士号を持たない求職者の仕事探しを、プラットフォームやパートナーシップを通じて支援しています。この取り組みのカギとなる「スキルファースト採用」(注1)について、IndeedでSenior Vice PresidentとしてESG(地球環境、社会、ガバナンス)の取り組みを主導するLaFawn Davisに聞きました。

(注1)資格や職歴よりもスキルを重視する採用。「スキルベース採用」とも呼ばれる。

採用難の時代に注目を集め始めた「スキルファースト採用」

採用は本来、仕事に必要なスキルや能力によって決められるべきです。しかし、雇用市場に存在するバイアス(偏見)や障壁は、求職者の仕事探しや採用、仕事の継続に悪影響を及ぼしています。そのひとつが「学歴」です。例えば米国では、何百万人もの求職者が、学士号がないために書類審査で一律不合格になっています。世界60か国以上で採用プラットフォームを運営するIndeedはこの学歴の壁の低減に優先度高く取り組んでおり、そのカギを握るのが「スキルファースト採用」です。

LaFawnは「スキルファースト採用とは、その名の通り、候補者をスキルに基づいて選考する方法です。まず学歴でふるいにかける(Screen out)従来の選考方法とは異なり、活躍の可能性がある候補者をまず候補者リストにすくい上げ(Screen in)、初期段階でスキルを評価します。より大きな母集団の中から、業務遂行能力の高い人材を見逃ずに、短期間で採用することを可能にするものです」と説明します。

2010年代後半以降、世界の雇用市場が逼迫するなか、雇用主側では、学歴よりスキルと能力を重視して採用する動きが徐々に広がっています。学士号を応募要件とする雇用主は減少傾向にあり(注2)、かつて見過ごされてきた層の求職者に機会が開かれてきています。

(注2)出典:Indeedデータ

米国における学位を求める求人の割合の推移を示したグラフ

米国でも求人票の応募要件に学位を含める雇用主の割合は年々減少している

「スキルファースト採用」の推進によって学歴の壁を低減していく

実は、IndeedでESGの取り組みをリードするLaFawn自身も、かつて学歴の壁に直面した当事者です。「私は学士号を持っていません。ですから、それがいかに仕事探しの際に大きな壁となって立ちはだかるか、身ををもって知っています」と語ります。

「2000年はじめにインターネットバブルがはじけてレイオフされた時、学士号を持っていなかったために、なかなか仕事が見つかりませんでした。十分な実務経験やスキルセットを持っていたにも関わらずです。当時、小さな子どもを抱えたシングルマザーだった私は、車も売って、アパートも引き払って、実家に戻らなくてはなりませんでした。しかも、半年後に友人のつてでどうにか職を得ましたが、年収9万ドルだった私がようやく就けたのは、時給11.75ドルの仕事だったんです」とLaFawnは振り返ります。

「個人的にも、学歴の壁に直面する求職者を救いたいという思いは強いです。自分ならその仕事ができると分かっているのに、学歴の壁に阻まれてなすすべもない時の気持ちが痛いほど分かりますから。当時の私のようにサポートを必要としている求職者のために私たちが今できること。それが、スキルファースト採用の推進だと考えています」と、この取り組みへの思いを強調しました。

LaFawn Davis, Senior Vice President of ESG, Indeed

Indeedでシニアバイスプレジデント ESG担当を務めるLaFawn Davis

「スキルファースト採用」を促進するIndeedのプロダクトとパートナーシップ

Indeedでは、プロダクトとパートナーシップを通じて、雇用市場全体のスキルファースト採用を推進する取り組みを行なっています。

まず、Indeedのプラットフォーム上では、「学士号不要(No college diploma)」や「高卒資格不要(No high scohol diploma)」という検索フィルターを設けて、求職者が学歴不問の求人情報を見つけやすくしています。また、企業の求人作成画面上では、従来行っていた学歴要件項目の入力レコメンドを廃止。これにより学歴を要件とせずに募集をする企業が増え、さらにそういった企業の応募者も増加しました。

Indeedの検索ページ上の、学歴不問の求人に絞り込むプルダウンのイメージ

学歴不問の仕事を見つけやすい検索フィルター

また、米国では、パートナーシップを通じてSkill Connect外部サイトへ(英語のみ)というサービスも提供しています。Indeedのパートナー団体が提供する職業訓練プログラムを修了した求職者が、Skill Connect上で専用の履歴書作成手順に沿って、プログラムごとに事前に設定されたスキルや資格の候補を選択していくだけで、簡単に履歴書を作成することができるサービスです。求職者の受講履歴やスキル情報は、Indeed上で求人活動をしている企業に公開され、スキルを持つ人材を求める採用企業とのマッチングに活用されます。

スマートフォン上のSkill Connectのユーザーインターフェースイメージ

職業訓練プログラムを修了した求職者は、SkillConnectを使うと、入力の手間なくスムーズにレジュメ作成を始めることができる

なお、Indeedの自社採用についても、社内にプロジェクトチームを立ちあげ、すべての仕事の職務要件を見直し、本当に学位を必要とする仕事以外は学歴要件を削除。これによって、募集の大半である700以上の求人から学歴要件を取り除くことができたとLaFawnは語りました。

「スキルファースト採用」は学歴以外の壁にも効く

LaFawnは最後に、スキルファースト採用の持つさらなる可能性に触れました。「スキルファースト採用が進めば、全てとは言いませんが、学歴だけでなく犯罪歴、障がい、従軍経験へのバイアスなど、雇用市場で障壁となっているもののうちかなりの部分は低減できるでしょう。学歴がなくても、犯罪歴があっても、それは本来的には採用の合否に関係ないはず。重要なのは候補者がその仕事に必要なスキルを持っているかどうかです。もちろん、自分の弁護士にはロースクールを出ていてほしいし、主治医にも医学部を卒業していてほしいですが、一般的な求人に載っている学歴要件のすべてが、職務遂行に必要とは限りませんよね。その他の要件についても同様で、応募要件のインフレのようなことが起きているんです。ですから私たちは、雇用主が本当に必要な要件に絞り込んで採用できるように、一方の求職者は自分のスキルをうまく雇用主にアピールできるように、今後も一層サポートを進めていきます。」

IndeedでESG担当シニアバイスプレジデントを務めるLaFawn Davis

LaFawn Davis

Indeed Senior Vice President of ESG

Google、Yahoo!、PayPal、Twilioなどのテクノロジー企業を経て、2019年にIndeedに入社。ESG担当シニアバイスプレジデントとして、サステナビリティ、DEIB+(多様性、公平性、包摂性、帰属意識など)、ソーシャルインパクト、インクルーシブな採用サービス、AI倫理などの分野で、Indeed社内のチームを主導。社外のアドバイザー、ソートリーダーとしても活動し、積極的に講演活動も行う。Fortune誌の「世界で最も影響力のある女性」、Entrepreneur Magazine誌の「世界で最も影響力のある女性100人」、Fast Company誌の「Queer 50」、San Francisco Business Times誌の「ビジネス界で最も影響力のある女性」に選出。Lesbians Who Tech and Power to Flyの諮問委員会のメンバー、Operator Collectiveのリミテッドパートナー、エンジェル投資家でもあり、Black Venture Instituteのフェローも務める

2024年03月26日

※事業内容や所属などは記事発行時のものです。