サステナビリティオービット
「価値創造プロセス」の中でも重要な要素である、サステナビリティに関わる取り組みの全体像を「サステナビリティオービット」と呼んでいます。
「ステークホルダーダイアログ」や経営陣と従業員との対話である「タウンホールミーティング」など、ステークホルダーのみなさまとの対話を通して広く社会からの要請や期待を認識した上で、社外専門家と社内経営陣を交えたサステナビリティ委員会にて深く議論します。その後、リクルートホールディングス取締役会にて経営陣のコミットメントを得て、行動指針に沿って具体的なサステナビリティ活動を推進し、経営理念の実現につなげていく。私たちは、この軌道(オービット)を循環させていくことを大切にしています。

「オービット」の中核をなす サステナビリティ委員会

サステナビリティ委員会
サステナビリティ委員会は取締役会の諮問機関として位置づけられ、多様な専門領域に精通する4名の社外委員(任期2年)、CEO、サステナビリティ担当取締役、担当執行役員と全SBU長によって構成されます。年に2回開催されるこの委員会は、ステークホルダーのみなさまとの対話・交流、および社会における多様な環境変化と企業責任の重要性の高まりを踏まえ、リクルートグループへの期待・要請・批判を経営陣が明確に認識する場です。同時に、私たちが迅速に取り組むべき行動、中長期視点において熟慮すべきテーマを議論する場でもあります。2019年3月期は数あるアジェンダの中でも特に「ビジネスと人権」のテーマについて掘り下げて議論し、取締役会における決議を経て、具体的な取り組みを実行する2つのタスクフォースがスタートしました。
社会の声を受け止め議論し、企業として何をすべきかを決め、指針に則って行動し、その成果を再びステークホルダーのみなさまに問うていく。循環するこの仕組みの中で常に社会の期待に耳を傾け、新たな価値を生み出し続けることこそが私たちのサステナビリティの本質であり、サステナビリティ委員会はその中核をなしています。
社外委員はどう見る?

Aditi Mohapatraさん
BSR
ニューヨーク事務所
女性のエンパワーメント
担当ディレクター
企業のサステナビリティ推進において重要な要素のひとつは、経営層のコミットメントです。誠実に取り組む意思決定者の姿勢と、事業の根幹に関わる重大な課題に対処する意志がなければ、有効な戦略を構築することはできません。CEOやSBU長が積極的に関与するリクルートグループのサステナビリティの取り組みは、グローバルな組織として、サステナビリティ戦略を重要視している良い例といえます。
成功の鍵を握るもうひとつの重要な要素は、サステナビリティに関する経験と知識のある第三者である専門家が評価と提言を行うことです。 サステナビリティ委員会で得た社外有識者のアドバイスをいかに取締役会で取り入れ、次回の議論までに進化させるかを、私は見てきました。その意味で、第三者意見の活用がなされていると思います。リクルートグループが、SDGs(持続可能な開発目標)と国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を中心とした国際的な枠組みと指針に取り組むことは、グローバルな動きに自らの取り組みをリンクさせることになりとても重要なことだと思います。これは、持続可能な成長が企業として必要不可欠であるだけでなく、企業市民としての義務でもあることを、リクルートグループが真摯に受け止め理解していることの現れだと思います。
HRテクノロジー、メディア&ソリューション、人材派遣の各SBUは、いずれも大きな変化の中にあります。そのなかで、サステナビリティの課題を前向きに検証し、社会における自らの役割を考え、課題解決に取り組む姿勢はとても良いと思います。まだ明確な答えのない「ダイバーシティ&インクルージョン」や「AI(人工知能)技術に潜む偏見」などの問題にも、真摯に取り組もうとする姿勢を感じます。
リクルートグループには、引き続き意欲的にサステナビリティに取り組み、この分野でのリーダーシップを発揮していただきたいと願っています。
重点テーマ策定プロセス
5つの重点テーマとSDGsは、以下のマテリアリティ分析(重点課題を特定するための分析プロセス)をベースとした策定プロセスを経て絞り込みました。
1960年の創業以来、リクルートはその基本理念である「一人ひとりが輝く豊かな世界を実現する」という想いを大切に、事業を発展させてきました。事業内容の変化やグローバル化を踏まえ、2018年3月期には、社会からの期待と私たちの事業領域との関連性を紐解くマテリアリティ分析を実施。その結果、すべての企業市民に求められることだけでなく、私たちだからこそ挑戦すべきテーマも加え、優先的に取り組む5つの重点テーマを設定しました。
分析において、国際NGO・サステナビリティ専門組織などの多様なステークホルダー約70名の方との対話を通し、さまざまなご意見を伺いました。ご意見をもとに、SDGsの国連総会文書および17項目のアジェンダ・169個のターゲットに照らし合わせて18のテーマを縦軸に、事業との関連性の高さを横軸にプロットしました。マテリアリティ分析のプロセスから結論までを取締役や社外委員が出席するサステナビリティ委員会にて諮問し、2回にわたる議論を踏まえ、SDGsから6つの目標を、それに関連する重点テーマ5つを導き出しました。
SDGsの序文にある「すべての人々の人権を実現」を「人権の尊重」、「1.貧困をなくそう」「4.質の高い教育をみんなに」「10.人や国の不平等をなくそう」を「機会格差の解消」、「5.ジェンダー平等を実現しよう」を「多様性の尊重」、「8.働きがいも経済成長も」を「働き方の進化」、「13.気候変動に具体的な対策を」を「環境の保全」として、リクルートグループが重点的に取り組むテーマを5つ策定しました。これらは相互に作用し合いながら達成していくべきものであるという認識を持ち、多角的に取り組むという結論に至りました。
また行動計画として、人権や環境に関しての取り組みの開示や、グローバルスタンダードレベルを早期に達成するための国際情勢の把握に取り組みます。
①項目の設定
重要な社会課題として国連サミットにて全会一致で採択されたグローバルサステナビリティテーマであるSDGs(持続可能な開発目標)の指標を使用。

②ステークホルダーの期待の評価
「ステークホルダーからの期待」として、国際NGO・サステナビリティ専門組織など、多様な分野のみなさまとダイアログを行い、リクルートグループが取り組むべき社会課題を抽出し優先度を評価。

③ビジネスとの関連性の評価
「リクルートグループのビジネスとの関連性」について、事業との関連性で重要度を評価。

④重要課題の確認
「ステークホルダーからの期待」「ビジネスとの関連性」の2軸で評価し、リクルートグループにおける重点課題を策定。

⑤レビュー
サステナビリティ委員会にて、社外の方を含めてこれまでのプロセスについてのレビューを受け、重点テーマを検討。

⑥重点テーマの決定
リクルートグループにおける5つの重点テーマを設定。国内・海外の視点を取り込み、重点テーマの定期的な見直しを実施。

サステナビリティ5つの重点テーマ
私たちは、企業活動が持続的に社会に価値を生み出すことを目指し、そのための取り組みをサステナビリティ活動と呼んでいます。事業そのものに加え、多様な社会貢献活動や一人ひとりが活躍できる組織づくりに取り組んでいます。これらは、重点テーマ策定プロセスで決めた、以下の5つの重点テーマに紐づいています。
働き方の進化
仕事とは何か。働くとは何か。求人広告事業から始まった私たちの歴史は、世の中の「働き方」を考える過程でもあった。私たちはこれからも、より良い働き方とは何かを考え、そして働き方の概念を変えていく。すべては個が活きる社会のために。
機会格差の解消
私たちは信じている。「自らの人生を、自ら選択できること」は幸福であると。だからこそ「機会格差」をなくすことは多くの人々に新たなチャンスをもたらす。個人ユーザーと企業クライアントの両者を結びつける事業活動を通じて、世界中の機会格差を解消しよう。
多様性の尊重
私たちは、人と人のあらゆる違いを大切にする。それは私たち自身に対しても、社会に対しても。なぜなら私たちは、一人ひとりが違うこと、その差異が価値を生むことを信じているから。違いを認め合い、創発する社会をつくっていく。
人権の尊重
人権の尊重なくして、私たちの基本理念「一人ひとりが輝く豊かな世界の実現」はない。グループで掲げた人権方針と倫理綱領に基づき、多様なステークホルダーの人権を尊重する企業であり続けたい。
環境の保全
地球上に存在する私たちの共通使命として、この惑星の環境を時を超えて保全しよう。私たちは、自らの影響力を把握し、気候変動、資源の保全、生物多様性などの環境負荷削減に取り組むとともに、環境に配慮したライフスタイルを社会に向けて啓発する。