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理念・企業文化・戦略

リクルートのコアバリュー リクルート経営コンピタンス研究所室長インタビュー

「リボンモデル」をベースとした、社外への「顧客接点」と社内の「個人の協働」

巻口 隆憲

株式会社リクルートホールディングス経営企画本部 サステナビリティ・PR
リクルート経営コンピタンス研究所 室長

リクルートの強さは人的資本のレベルと層の厚さ、顧客接点の量と関係性の強さですが、その強さの源泉となっているのが知的資本です。リクルートはかねてからコンピタンスの強化に継続して力を入れてきました。

私たちは自らのビジネスモデルを「リボンモデル」と呼んでいます。リクルートの全てのコアコンピタンスは、この「リボンモデル」に根ざしています。
「リボンモデル」とは、ユーザーとクライアントを結びつける概念ですが、はじめに2つの「顧客接点」からの「インサイト(不満、不便、不安など)」を捉えることが起点となります。最終的には顧客の「不」の解決に向け、社内の「個人の協働」をつなげていくベースとなる概念です。

例えば、クライアント接点を担う営業スタッフと、データサイエンス分野のエンジニアが共通の目的意識を持てるのも「リボンモデル」のおかげですし、全体のなかで自分の位置付けが明確になり、さらに個々が発見した成果やナレッジを共有する際の基盤になっているため、高いレベルでのコミュニケーションや協働が可能になります。

また「リボンモデル」を自らの手で新しく立ち上げていきたいという思いは「起業家精神」、自分で発見した顧客のインサイトにこだわることは「圧倒的な当事者意識」、リボンモデルとして最終的につなげていくために協働を進める源泉が「個の可能性に期待し合う場」です。つまり我々の本当の強さは、知的資本の源流にあるリボンモデルと、企業文化が密接に結びついていることだと思います。

世界トップクラスのビジネススクールであるIESE(スペイン)やIMD(スイス)において、リクルートの「リボンモデル」はケーススタディとしてまとめられ活用されている

世界トップクラスのビジネススクールであるIESE(スペイン)やIMD(スイス)において、リクルートの「リボンモデル」はケーススタディとしてまとめられ活用されている。IMDによるケーススタディはThe Case Centre Awards and Competitions 2017を受賞。

「ストーリー」をシェアすることで、挑戦のスタンスが共有され協働が生まれる。

リクルートはかねてから知的資本に投資してきたと先ほど明言しましたが、その代表的なものが、従業員のナレッジシェアの場と協働の仕組みです。従来、ナレッジマネジメント施策として、顧客接点の分野を中心に新サービスや新商品につながる成果を出した案件を選出する「TOPGUN AWARD」を実施してきましたが、それを2015年から「FORUM」へと発展拡大させ、「顧客接点部門(TOPGUN)」、「テクノロジー部門(ENGINE)」、「事業開発・改善部門(GROWTH)」、「経営基盤部門(GUARDIAN)」の4部門で展開しています。

メンバーの間でシェアされるのは、ソリューションの「成果」や「打ち手」、「スキル」だけでなく、なぜその「課題」を設定したのかということから、具体的なソリューションに至るまでの苦労や失敗をも含む生々しい挑戦の「ストーリー」です。それをナレッジとして共有することで、日常の仕事のなかから新しい挑戦をしていきたい、というスタンスが共有され、メンバー同士の新たな協働の芽が生まれます。現場では個人への期待を込めて「あなたは、どうしたい?」と問い続け、それぞれの「実現したいこと」への執着が、より「高い目的」を設定することにつながり、結果として社会を変革するようなイノベーションへとつながっていくのです。

世界のビジネススクールが注目するユニークな存在、リクルート

株式上場以降、リクルートの「リボンモデル」は海外の著名なビジネススクールでケーススタディ化されています。何人もの海外の教授たちと対話を続けるなかで、リクルートのコンピタンスは日本発でありながら世界に通用するものであると確信しました。

そもそも日本でビジネスを磨き発展してきたリクルートは、創業メンバーがピーター・ドラッカーの影響を受けていたことから心理学的経営を標榜し、1960年に創業しています。創業から50年以上経過しながらもなお平均年齢が30代前半でベンチャースピリッツを失わず、かつ成長を続けているということは、コンピタンスや仕組みや企業文化が普遍的でありながら、独特な発展を遂げてきた証拠だと考えています。

海外のビジネススクールから注目されているポイントは「コネクト」と「ボトムアップ」です。

リクルートのリボンモデルは、価値創造モデルであり、社内協働モデルでもありますが、それを実効性のあるものにしているのは経営と現場の間での「情報の透明性」と「共有スピード」の速さです。つまり組織を上下左右に柔軟に「コネクト」できることは、経営の意思決定の速さを生み、戦略の変更を柔軟にし、勝ちパターンが見えた暁には、一気呵成に実行することをも可能にしているのです。さらにナレッジシェアの仕組みによって、ひとつの現場の挑戦や実験の結果を組織として戦術化しいち早く取り入れ、さらに経営の大胆な投資判断によってレバレッジを効かせていく。新しい「ボトムアップ」型の経営手法であることが、現在の環境が激変する時代の大切な競争優位につながっています。「0から1」のビジネスを創り出すことにこだわりながらも、同時に「1を10」にしていくことができるリクルート。本来両立することが難しく、矛盾する2つのマネジメントを実現できてしまうのは、変化の速い時代に求められる新しい「ボトムアップ」の方法論をリクルートが持っているということの証です。そのこと自体が、リクルートが日本的でありながら同時に世界的でもあるという極めてユニークな存在であると評価される所以なのかもしれません。