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ガバナンス・財務

グローバル企業としての成長を見守りつつガバナンスを効かせていく — 社外取締役対談

当社の社外取締役である大八木成男氏と、新貝康司氏に、当社グループのコーポレート・ガバナンスに対する評価や企業価値向上に向けた課題について語り合っていただきました。

社外取締役 新貝 康司 氏

1980年日本専売公社(現JT)へ入社。財務企画部長、取締役執行役員財務責任者(CFO)を経て、2011年代表取締役副社長に就任(現任)。2014年6月より、株式会社リクルートホールディングス社外取締役。

社外取締役 大八木 成男 氏

1971年 帝人株式会社に入社。医薬医療事業部などを経て、2008年 代表取締役社長CEO、2014年 取締役会長に就任(現任)。2014年6月より、株式会社リクルートホールディングス社外取締役。

Q. リクルートグループは2012年に分社化して以来の大きな組織変革として戦略ビジネスユニット(SBU)体制に移行しました。その進め方についてどのように感じていますか?

大八木: 取締役会でこのプロジェクトの提案は昨年度の内に提案されました。「グローバルな世界でIT化が急速に進展する中で、リクルートグループはどういう組織体制であれば、世の中の変化に適応できるか」ということを、取締役の方々が実に戦略的に考えていることを知りました。組織変更には、企業価値を増大させるという意図があるわけですが、当然リスクを伴います。そうした観点から、経営戦略会議で戦略ストーリーを、非常に速く綿密に検討してこられたという印象でした。各SBUをどういう事業領域でくくるのか、それによって会社全体の効率がどのように上がるのかといったことから、各SBUを支える人材とコストの問題やリスクと責任の所在、さらにホールディングスにおけるSBUの位置付けといったことまでしっかりまとめられていて、私たち社外取締役も自然に議論に参加することができました。
私の出身母体である製造業界では、ものごとの進め方がもっとゆっくりしていますので、リクルートグループにおける大きな体制変更はあと数年してからだろうと思っていましたが、こんなにスピーディな展開を進めることに感動すら覚えました。

新貝: 私もスピードの速さに感嘆しています。リクルートホールディングスとして各SBUに何を期待しているのかということは、取締役の皆さんの中では明確にイメージされていたと思いますが、取締役会での議論を通じて我々社外取締役にも、よりくっきりと見えてきました。当初はSBU体制への移行が、ひょっとして「屋上屋を重ねる」ことになってしまうのではないかという懸念がありました。ところが、そうした旧来の組織論が陥りやすい落とし穴についても真摯に向き合われていて、具体的に「権限委譲をどうやって進めるか」、「ホールディングス、各SBU、もともとある子会社の間で責任権限をどのように位置付けるか」ということも取締役陣の中で明確な考えを持っておられました。特にメディア&ソリューションSBUの事業領域は、他のSBUと比べると多岐にわたり、複雑性、多様性が違います。そうした事業を1つにくくることの意義について相当深い議論がなされたと思います。結果として各SBUの見える化が進み、一つひとつの事業会社ではできないことがSBU内で横断的にできるようになることや、そうしたファンクショナルな部分が財務成果でもより見えやすくなって、「どこで価値が生まれているか」が分かるようになってくるのです。これは素晴らしいと思いますね。

大八木: そして、その間に、実は子会社株式譲渡による事業ポートフォリオマネジメントやITシステムの再編成なども実行されている。このような自己変革ができているというところは、リクルートグループの特徴ではないかと思います。

Q. 海外企業のM&A成立後の統合プロセス(PMI)についての評価と課題を教えてください。

新貝: 私は過去にさまざまなPMIを経験してきましたが、リクルートグループにおけるPMIには、それぞれの企業文化を大切にするという特徴があります。企業文化とは何か。それは長年培われてきた、あるいはいろいろな仕組みの影響を受けて培われた、そこに集う人々の行動パターンです。例えばIndeedの場合は、創業して間もない頃からずっと急成長を続け、その間に培われたものがあります。それを、リクルートの企業文化で上書きするようなことはしないという大胆な決定がなされたんですね。これは素晴らしいことだと思います。そもそもPMIを成功させるには、「M&A後にどういう経営をするか」をM&A前に決めておくことが重要です。グローバル派遣SBUでは、M&A前に「ユニット経営」がいかに優れているかをまず相手方に説明し、「こういう経営をしてみたい」と相手に思ってもらう。つまりM&Aされた会社の主体性をいかに鼓舞するかということに心血を注いでいる。
一方で、M&Aにおいて取ってはいけないリスクを回避できるか、という視点も重要です。それについては外部の知見も入れてしっかりとコントロールできていたと思います。そうした中で私が注目しているのは、メディア&ソリューションSBUの取り組みです。これはITを活用した新しい事業の在り方を模索している途上であり、M&Aした海外子会社のPMIを進めているところですが、その具体的な姿は「M&A前に設定した勝ち筋を、PMIの状況に応じて走りながら柔軟に修正し、見定めている」のであり、これは普通の会社ではなかなかできないことです。私たちも社外取締役として辛口の意見も言いますが、取締役の方々はそれをしっかりと受け止めつつ、取るべきリスクはやはり取らないと次のリターンを得られないという覚悟を持って取り組んでいることが感じ取れます。

大八木: PMIに失敗する例は世の中にたくさんあります。それは要するにマネジメントから見えない場所にコンプライアンスの問題が潜んでいることがあるからです。コンプライアンスへの取り組み・体制をしっかりと仕上げていくことが、これからのリクルートグループには必要ではないでしょうか。SBU体制によってホールディングスからSBU側に責任権限が移っているので、全体の調和のなかでいかにコントロールするかということが重要です。その点について取締役の皆さんはすでにお気付きだと思います。

新貝: 会社が揺らぐような話というのは、目が行き届いていない辺境からということが多いですね。透明性を上げてまずはリスク情報を共有することがグローバル経営をするためには重要ですし、それはPMIにおいても同様です。問題が起きたという他社事例がこのところたくさんありますので、私たちも常に注意を喚起していくことが大事な役割だと自覚しています。

Q. ガバナンス向上に向けた取り組みについての評価をお聞かせください。

大八木: リクルートホールディングスは、監査役会設置会社という制度のもとでガバナンスを持たれています。今後、決定権限などをSBU側に移していくことになると、ホールディングス側に求められる役割もモニタリング機能がより重要となり、今後も制度設計が変わっていく可能性があります。

新貝: おっしゃるとおりです。ただ、グループガバナンスをするということと、事業をスピーディに進めていくというのは必ずしも常に同じベクトルを向いているわけではなく、あるときはベクトルがちょっとずれることもあります。そこに健全なせめぎ合いがあって、特にリスク情報の透明性を高めていくことの重要性が改めて認識されるのです。SBU側もガバナンス側の人たちも、きちんとface to faceで話をして共通の理解を醸成すれば、その後の展開は早いはずです。そこで実際にどれだけ相手を納得させられるか、そうした努力が感じられ、アウフヘーベンすることができた1年だったのではないかと思います。

大八木: リクルートグループの事業に対する挑戦力は非常に旺盛なので、コンプライアンス面で絶対に間違いが起きないようにすることが私たち社外取締役の役目となります。この点については、さまざまな形でレポーティングを求めてきましたし、意見も言ってきたつもりです。この1~2年を振り返ると、通常レベルのコンプライアンス対策は勿論のこと、今年度からは執行役員に外国籍のメンバー(法務・コンプライアンス・情報セキュリティ担当執行役員Mark Schultz氏)が加わり、グローバルレベルでプロフェッショナルな人材の登用を図るなど、攻めと守りのバランスは非常に良くなっていると思います。私たちも引き続きリクルートグループの長期的な成長を支えていくために尽力していく所存です。

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