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リクルートグループのサステナビリティに関する有識者の声:足達 英一郎氏

株式会社日本総合研究所 理事
足達英一郎氏

社会的責任投資のための企業情報の提供を金融機関に対して行っている立場から、2015年6月時点のリクルートホールディングスCSRホームページ(WEB版)を通じて理解した、リクルートグループのCSRの取り組みとその情報開示のあり方について、第三者意見を寄稿します。

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「リクルートのCSR」として掲げている「『3つの行動指針』と優先的に取り組む『5つの重点テーマ』を定め、『事業で社会に貢献する』を中心に取り組みます」というメッセージは明快です。CSRホームページ全体を通じて、そうした企業姿勢を各々の事業活動で実践に繋げていることが、数々の具体的事例から理解できました。また各カンパニーの社長や社員のメッセージも豊富に掲載され、臨場感があり、読みやすいコンテンツとなっていることを評価したいと思います。

一方で、2014年10月に新規上場を果たした御社は、社会の公器であることが一層求められるようになったといえます。その観点から、いくつかの提言をさせていただきます。

第一は、CSRの取り組みを「方針」「実践」「成果」に分けて捉え、それらに即した開示を行うことです。企業の活動や意思決定が社会・環境に及ぼすポジティブな影響をより発揮しようとする局面と、ネガティブな影響をより緩和しようとする局面の両面で、こうしたマネジメントが定着すれば、取り組みはより自律的なものになるでしょう。

第二は、社会課題の焦点をよりシャープにすることです。一例をあげると「高齢化社会への対応」「女性の社会進出」「中小企業や地域活性化」といった切り口から「高齢者が安心して暮らすことができる住まいの不足」「女性の機会不均衡」「中小企業の生産性における課題」「地域の情報発信能力」などにフォーカスを絞ることで、説得力が増すでしょう。「経済的・地理的条件から拡がる教育格差」の記述は印象に残りました。「社会の包摂性を取り戻す(社会の中で切り捨てられる人を作らない)」という視点が、御社が「事業で社会に貢献する」ことを追求されるときに、有効ではないかと感じました。

第三は、責任ある事業基盤に関する開示について、よりメリハリをつけることです。御社の有価証券報告書には、「事業等のリスク」として「リクルートブランド」「情報システム」「個人情報・機密情報の取扱い」「人材確保・労務」「法規制」に関する事項が、詳述されています。これらは、事業活動にとって重要性を有する事項と考えられ、CSRの情報開示としても、より力点が置かれるべきでしょう。

最後に、御社グループの事業活動では「ユーザーとクライアントの利益相反をどう未然に防止するか」がCSRの核心になると判断されます。ICTの進展は、そのギャップを大きくしていますし、ユーザーの声に立脚したビジネスモデルも新たに生まれています。リクナビに学生から寄せられた声や「就職活動に関する意識調査」結果を率直に掲載された点には注目しました。今後、より「社会の声を聴く」実践に努められるとともに、利益相反を防止する仕組みやユーザーが不利益を被った場合の救済の仕組みも整備されていかれることを期待します。「情報の品質・信頼性の確保」に紹介された取り組みはいずれも興味深いものでした。次年度以降も、「××はしない」という意思決定を、ひとつでも多く積み重ね、それを開示して、業界をリードしていただきたいと思います。

「一人ひとりが輝く豊かな世界の実現」は、決して簡単ではありません。と同時に、世の中は「一人ひとりが輝くとは」、「豊かな世界とは」という問いに対する、リクルートグループの答えを期待しています。怯むことなく挑戦をつづけていただきたいと思います。

なお、このコメントは、本報告書が、一般に公正妥当と認められる環境報告書等の作成基準に準拠して正確に測定、算定され、かつ重要な事項が漏れなく表示されているかどうかについて判断した結果を表明するものではありません。

ご意見を頂いて

リクルートグループのCSRについて、貴重なご意見を頂きまして、誠にありがとうございます。足達様にご指摘いただいた通り、昨年の10月の上場を踏まえた更なる透明性の強化と、CSRの中心に据えた「事業で社会に貢献する」を分かりやすくお伝えすることを目指して今回の情報開示を行いました。特に、情報量を充実させた事業活動による事例部分をご評価頂き幸甚です。

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冨塚 優 株式会社リクルートホールディングス 執行役員

一方で、ご指摘頂きました「方針」「実践」「成果」による開示や、マネジメントの定着については、これからの企業経営の中でより強く認識を持ちながら進めていきたいと改めて認識致しました。また、社会の包摂性、すなわち社会の中で機会が得られず取り残される方を作らないという視点は、当社が今後さらに事業で社会に貢献するために非常に重要と考えております。同時に、ご指摘頂いておりますメリハリある開示についても、更なる改善を目指して参ります。

私たちのサービスをご利用いただくユーザーと情報を発信したいクライアント、その両方に対して価値をご提供するために、まずはユーザー視点に立った質の高い情報提供を行いながら、正しい市場のルールを創造するなど情報提供の在り方についても考えて参ります。今後も引き続きよろしくお願い致します。

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2015年07月01日

※事業内容や所属などは記事発行時のものです。